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品種の選定

品種の早晩性~

子実コーン栽培は未だ始まってから日が浅く、サイレージ用とうもろこし(以下サイレージコーン)との区別がされていないケースが殆どです。
品種の早晩性は子実コーンの場合、播種から子実が完熟するまでの期間で表される一方、サイレージコーンは総体(茎葉と雌穂を合わせた地表部の作物体全て)の水分がある一定レベルにまで低下する期間(多くは水分70%)で表されています。 
よってある2種類のとうもろこし品種を比較した場合、サイレージおける相対熟期の日数表記の差が5日であっても、子実の場合は同じ熟期という事もあり、また反対のこともあります。  

~子実コーンに適した特性~

子実コーンの品種選定で特に我々が重要と考えているのは①収量性(稔実性) ②子実の品質(カビの耐性等) ③耐倒伏性 ④耐病性です。
収量性(稔実性)は単純な雌穂の大きさだけでなく、栽植本数を増やした時に雌穂の先端まで子実を充実させる能力のことです。先進地である北海道が他のエリアより平均収量が高い理由の一つが稔実性の高い品種を密植している為です。茎葉の収量と子実の収量に必ずしも相関はありません。
左:稔実性が高い品種 右:稔実性が低い品種 
特に先端の子実の充実度が異なることがわかる 

カビに対する抵抗性は品種によって遺伝的に異なります。またハスク(雌穂を包んでいる包皮)の形状によってもカビの発生具合が異なります。カビの発生の多くが、サイレージ用の収穫適期である黄熟中期を過ぎてから顕著になります。つまりサイレージコーンの品種選定において、カビの耐性は殆ど整理されていません。
サイレージコーンとして非常に流通している品種であっても
子実コーン場面ではカビの発生が顕著なものがある 

耐倒伏性は①子実の稔実→収量性②収穫時の倒伏による収穫ロス、2つの点に影響があり重要です。倒伏と一口に言ってもどのステージで倒伏するかによって上記2点に与える影響が大きく異なります。 
 つまり①に影響をするのは特に開花期前後の倒伏である一方(開花時に倒伏をしていると受粉障害を原因となる可能性がある)②に影響するのは収穫前の倒伏です。 
仮に開花前に倒伏した場合、茎葉は立ち上が地回復する可能性が高い一方で、受粉が上手くいかず不稔になることがあります。 
 また、コーンヘッダーを導入すれば倒伏したとしてもかなり回収率を上げることが可能で、その場合は収穫前の倒伏に対するリスクは低く見積もって良いと考えられます。 
 よって耐倒伏性はステージごともしくは保有する装備によって、評価や対策が異なります、この点においてもサイレージコーンとは考え方を変える必要があります。
12葉期ごろに完全に倒伏したものの、回復し問題なく受粉が完了した様子 
人為的にステージごとに倒伏をさせ、回復程度をモニターした例。
左から早いステージで倒伏を、最も右は開花期に倒伏をさせた。
倒伏のタイミングが遅いほど、回復程度が悪いことがわかる 

収穫直前に完全に倒伏したものの、コーンヘッダーで非常に 
精度よく回収している様子
リールヘッダーだと回収に非常に困難を極める 
子実コーンの病害はエリアによって発生する病害が異なりますが、特に「すす紋病」・「ごま葉枯病」・「さび病」・「南方さび病」・「黒穂病」・「苗立ち枯れ病」・「根腐病」・「ワラビー萎縮症」が日本において重要と考えられます。これらには品種ごとに抵抗性が異なり、子実コーン場面では完熟期まで健全な個体を維持する必要がある為、黄熟期で収穫をするサイレージコーンと比較してもより高いレベルの抵抗性が求められます。 
他の作物の様に殺菌剤による防除を考えられなくはありませんが①発生時には草丈が2m以上となり、ドローン防除以外は不可能②殺菌剤コストが高価③抵抗性品種でコントロールが可能、以上のことから薬剤による防除は現段階において、あまり適切な方法とは言えません。
左:すす紋病感受性品種、右:すす紋病抵抗性品種 
品種特性上特に重要な点を記載しましたが、その何れでも国内で既に取り組まれているサイレージコーンとは異なる視点で選抜をすることが非常に重要です。
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