ハリガネムシ
ハリガネムシ
ハリガネムシと総称される幼虫は、コメツキムシ科の中の10種程度で、地域によって生息している種は 異なります。トウモロコシの発芽直後の種子や根を食害する甲虫の仲間です。
成虫は体長7 ~17mm程度。老熟幼虫は体長20~28mm程度で、円筒形で細長く、皮膚は硬く光沢のある濃赤褐色。幼虫、または成虫で越冬し、成虫は植 物の根際や土壌中に産卵します。
幼虫の生育には数年かかり、多くの種が属するクシコメツキ類では1世代2-4 年の経過を要します。越冬幼虫は地温の上昇とともに活動を開始し、土壌中で播種後の種子 や幼茎、根等に頭部を陥入して摂食するため、不発芽や、幼苗の生育の遅れ、さらには幼苗が黄変した後に枯死する等の被害が生じます。
トウモロコシの他にもジャガイモ、根菜類、ムギ類、イネ科牧草等、多くの植物を食害します。...
ネキリムシ(タマナガヤ・カブラガヤ)
ネキリムシ(タマナガヤ・カブラガヤ)
幼虫がトウモロコシの幼苗に大きな食痕をつけた り、地際で切断することから一般に「ネキリムシ(根切り虫)」と呼ばれるガ一種です。一般的にタマナヤガとカブラヤガの幼虫を指します。
終齢幼虫は体長約35~50mm。両種の幼虫は外見がよく似ており、混発することもありま す。頭部は褐色、黒褐色の網状斑があり、体は灰褐 色~褐色。タマナヤガは北陸以北では越冬できず、暖地では越冬します。カブラヤガは東北でも越冬します。
イネ科雑草の地際の葉に産卵し、幼虫は雑草を摂食します。トウモロコシに産卵することは少ないので若齢幼虫の被害はほとんど問題になりませんが、生育するにつれて雑草地から近隣の圃場へ侵入し、トウモロコシの幼苗の根元を食害します。このため発生源となる周辺の雑草を防除するとこは重要です。
しばしば茎を...
アワノメイガ
アワノメイガ
幼虫がトウモロコシの稈や雌穂の中に侵入するガの一種で、最も普通に見られる重要害虫です。茎などに孔を開けて侵入していくため英語でCorn Borerと呼ばれます。終齢幼虫は体長20-25mm、頭部は暗褐色、体はやや透明な淡褐色で小黒点が点在します。
アワノメイガは幼虫で越冬し、春先に蛹化して成虫になります。 2-3 齢以降になると植物体に孔を開け、内部に侵入するようになります。
トウモロコシの生育初期は未展開の葉や葉鞘を食害し、雄穂形成期以降は雄穂への侵入、絹糸抽出前後からは雌穂へ侵入することが多くなり、侵入孔の周囲には乳白色~黄色の虫糞や破砕くずが堆積します。
食害部は組織が脆弱になるので折れやすく、稈では下部...
ワラビー萎縮症
ワラビー萎縮症
温暖な西日本ではサイレージ用トウモロコシを年に2回収穫する「二期作栽培」は一般的な作付け体系です。実はこの「二期作栽培」という作型は1988年にパイオニアがその専用品種の販売を開始したことが栽培の始まりです。これにより、年間の単位面積当たりの乾物収量が大きく伸びました。
ところが販売を開始するとほぼ同時に、熊本県菊池市のごく一部の地域で図1のように株全体が著しく萎縮し、葉の裏の葉脈がこぶ状に隆起する症状が観察されるようになりました。激しく萎縮した株の収量は激減します。
図1 ワラビー萎縮症の典型的症状
当初はその症状から種子伝染によるウイルス病が疑われました。しかしその後の調査でフタテンチビヨコバイCicadulina bipunctataの吸汁時に植物体内に注入される物質が植物体の生長に影響して、萎縮症状が発現することが判明しました。...
苗立枯病
苗立枯病
2-4葉期にトウモロコシの地上部が急にしおれて枯死する病気で、糸状菌が原因です。原因はピシウム、フザリウム等の土壌病原菌で低温・多湿条件で播種をすると発生します。
また播種深度が深すぎる場合や、除草剤によるストレスが強い条件では発生が助長されます。このため、土壌が湿っている条件下で無理やり播種し、鎮圧ローラーをかけることも避けなければなりません。
環境変動が大きく、同一品種を播種した隣接する圃場でも発病程度が異なることもしばしば観察されます。一方、南方サビ病やごま葉枯病のような明確なものではありませんが品種間に緩やかな遺伝的差異が認められています。パイオニアでは現在この選抜をおこなっており、まもなく抵抗性品種をお届けできると思います。
図1 激しい苗立枯病...
黒穂病
黒穂病
黒穂病(英名:Common smut)はほとんどのトウモロコシ栽培地で発生する病害です。黒穂病は Ustilago maydis という菌により発生しますが、この菌は土壌および作物残渣上で生存します。この菌は植物についた傷から侵入して、あらゆる組 織に感染することができ、特徴的な炭状の瘤を作ります(図1)。
この菌は絹糸からも侵入することができ、雌穂の先端に瘤を作ります。罹病により作物の機能が損なわれ、不稔も生じるため収量も影響を受けることもあります。
黒穂病菌はトウモロコシ圃場に広く存在しますが、生育中の作物に菌が侵入するための好適な条件の有無で感染度合いが異なります。生育初期に作物が受ける傷害は感染への感受性を高くし、また、干ばつによるストレス、密植、過度の窒素施用も病害発生の頻度を高めます。...