追肥
施肥設計の項にもある通り6葉期以降に養分吸収が急激に増加します。逆に言うと、この段階で養分吸収が上手くいかない場合は、収量に大きな影響があり、後からの改善は難しくなります。
特に要求量が高いのは窒素であり、降雨や滞水で流亡の可能性も高くなることから、窒素を中心とした追肥がコストを抑えつつも、高収量確保をする上での近道です。
写真は追肥試験の結果です。追肥の効果は施用直後ではなく、特に絹糸抽出前後に以下の写真のような顕著な差が見られ、最終的には雌穂の先端の充実度合いに差が出ます。
追肥を行うにあたり、資材は窒素を主体とした尿素と硫安がコスト面からも使用しやすいと考えられますが、硫安を使用する場合は葉焼けが顕著に発生します。ブロードキャスターを使用する場合は尿素を、施肥カルチを使用する場合は尿素、硫安のどちらかの選択が推奨されます。
施用量は窒素換算で概ね5㎏/10a程度となる量が適当で、尿素だと約10㎏/10a、硫安だと約20㎏/10aです。多過ぎる窒素施用は軟弱徒長を誘発し、草丈が急激に伸びる10葉期以降に倒伏する恐れがあります。
追肥が特に有効と考えられる場合は①排水が悪く、基肥の流亡の可能性が高い ②土壌の物理性が悪く、根域拡大に制限がある ③有機物還元が十分でなく、保肥力が低い ④低温で生育不良、などです。
追肥効果を上げるポイントは追肥後に成分を土壌表面から速やかに土壌中に浸透させる(つまり雨による溶解と浸透、一方土壌が乾燥し続けるとロスは大きくなる)ことで、降雨直前の施用で効果が最大となります。
肥料分が根から吸収できる形態になるまではタイムラグがあります。よって養分吸収のピーク直前(4~6葉期)に施用することが望ましいです。これらからブロードキャスターより施肥カルチの方が効果は安定する傾向にあります。
葉面散布についてはあくまで一時的なカンフル剤という位置づけで考えることが肝要です。追肥時に必要な養分量を葉面散布で確保しようとした場合、コストが高くなる、濃度障害による葉焼けが顕著になることから、これまで述べた一般的な追肥との置き換えは困難です。窒素分を十分に吸収した場合、根の発育が旺盛になり、他の養分の吸収量も上がるので、先ずはとうもろこしの主食である窒素を充足させるようにしてください。