「成長と発育」の記事内容について
「成長と発育」の記事内容について
「成長と発育」に掲載している記事と写真はDuPont Pioneer(現Corteva)が2015に米国で発行した技術冊子「トウモロコシの成長と発育(Corn Growth and Development)」の内容を日本語に翻訳してウエブ向けに編集したものです。掲載内容の無断複製および転載を禁じます。
“Growth and Development” was translated and edited from “Corn Growth and Development” which was published by DuPont Pioneer in 2015. Unauthorized reproduction is prohibited.
トウモロコシとハイブリッド品種
トウモロコシ
トウモロコシ(Zea mays, L.)は子実やサイレージを用途に世界で約1億8千8百万ヘクタールの面積で作付けされています。最近の10年間でトウモロコシの作付面積は20%以上増加していますが、これは主として米国以外の生産地によるものです
米国だけで世界のトウモロコシ子実の35%以上を生産しています。小麦の栽培面積はトウモロコシを上回り、また米の栽培面積もトウモロコシとほとんど変わりませんが、生産量に関しては、トウモロコシはこれらの作物を大幅に上回ります。このため、トウモロコシの生産は経済的な面も含めて、世界の農業で大きな役割を果たしています。
ヘンリー・アガード・ウォレス...
トウモロコシの受粉と受精
トウモロコシの受粉と受精
種子(図3)となる胚珠を作ります。
図4に示すように、雌雄の花の間は垂直方向に約1m離れていて、これが受粉の成功を妨げる原因となりえます。
生産性に関して、雄花は100万以上の花粉粒、雌花は1000以上の絹糸を作ることが出来ます。この結果、絹糸の約1000から1500倍の数の花粉が生産されます。理論的には、20から30個体の花粉で1エーカー(0.4ヘクタール)の絹糸を受粉させることが出来ますが、全ての花粉が絹糸までたどり着くわけではありません。
図2 完全に展開したタッセル(雄花) 図3 絹糸抽出期の未成熟な雌穂(雌花)
図4 雄花と雌花の垂直の間隔...
成長と発育〜トウモロコシの生育ステージ〜
成長と発育
トウモロコシ生産の用語の中で、成長(growth)と発育(development) の二つほど頻繁に使われるものはないでしょう。この二つの用語は時には同じ意味で使われますが、実際には異なる意味を持ちます。成長は単純にサイズの増加を意味し、 良好な生育条件(適度な水分、栄養、温度等)によって促進され、ストレスの多い生育条件(異常な温度、栄養や水分の不足等)では抑制されます。発育は植物が一つのステージからより成熟した次のステージへ発達することを意味しています。
日射量は植物の成長と発育に欠かせないインプットです。植物は日光を吸収し、これを光合成のエネルギー源として利用しています。作物が日光を集める能力は一定面積に占める葉面積、すなわち葉面積指数(LAI)に比例します。草冠(canopy)が最大に達した時、...
生育期積算温度
ある発育ステージのトウモロコシが次の発育ステージに移るまでの期間は積算温度の値に左右されることが明らかになっています。 (Gilmore & Rogers, 1958).
積算温度の推定にはいくつかの良く知られた方法があります。このう最も一般的な方法はグローイングディグリーデイズ(GDDs)、またはグローイングディグリーユニット(GDUs)、あるいはヒートユニット(HUs)と呼ばれる方法です。この方法は成長と発育に関係する最高温度と最低温度に基づくもので、トウモロコシの場合、この温度は以下のようになります。
最低温度= 10°C (50° F )
最高温度= 30°C (86° F)
10°C (50°F) を下回る、また30°C(86°F )を上回る温度の下ではトウモロコシの成長は僅かでしかありません。 GDDsのコンセプトでは以下の式を用いています。
GDD...
トウモロコシの生育ステージ
トウモロコシの生育ステージ
トウモロコシの生育ステージの決め方に関しては、複数の方法が存在しています。
ここで紹介するリーフカラー法はアイオワ州立大学が開発したもので、生育ステージを栄養成長期(V)と生殖成長期(R)に分けます。このシステムを使用することで、定義された植物生育上の生理学的段階が示されます。これは他の指標システムを使うよりも容易に生育ステージが区別できます。 この他の指標システムの中には葉数や草丈が含まれます(除草剤のラベルに用いられる)。展開する葉数や草丈はリーフカラーシステムに比べると正確ではありません。植物は種々の環境やストレスに反応し、草丈だけを見た場合、見た目よりも成熟して見える場合があります。...
発芽と出芽(VE)
発芽と出芽(VE)
播種後、種子は吸水を開始し、その量は種子重量のおよそ30ー35%になります。この過程で地温はあまり影響がありません。
その後、幼根の伸長が始まりますが、これには地温が関係します。一般的に発芽に必要な最低地温は10℃とされています。
幼根が伸び始めるとすぐ、種子から3ー4本の根が発生します。これらの根と幼根は種子根を形成し、幼苗の水分および一部の栄養分の吸収を担います。ただし、幼苗に必要な栄養の大部分は胚乳から加水分解された澱粉とタンパク質から供給されます。 冠部と冠根(永久根)の発生は出芽期(VE)に始まります。
トウモロコシは「地下性」の出芽を行います。これは子葉が地表よりも下に止まっていることを意味します。その後、中茎(最初の節間)が伸び、子葉鞘の先端を地表に押し上げます。
図15 トウモロコシの出芽(VE)...
栄養成長初期(V1-V5)
栄養成長初期(V1-V5)
この期間、茎(節間)の伸びは最少で、地温にも影響を受けます。V5ステージより前は生長点はまだ地表よりも下にあり、全ての葉とイアーシュートの成長が開始されます(図17)。
シュート(苗条)は最初の葉(地下)から第13葉(地上)くらいまでの間の各節(各葉の葉腋)に発生します。地上部のシュートは生殖器官(雌穂)に分化し、地下部のシュートは栄養器官(分けつ)に分化します。
図17 V3ステージのトウモロコシの切開図
永久根は地下部の5つの節から生じます。また1つは地表部、そして1ないし幾つかの根が地上部の節から生じます。地上部の根は一般に「支根」と呼ばれ、先端が土壌まで侵入した場合は茎を支え、水や栄養分を吸収すると考えられています(図18)。...
栄養成長中期(V6ーV11)
栄養成長中期(V6ーV11)
この期間にトウモロコシは非常に速い節間伸長を開始します。生長点はV6ステージには地上部に移り、このため生長点を害する環境や機械的要因による損傷に対して脆弱になります(図20)。
この速い成長の結果、最初の葉(鞘葉)を含む最下部の3ー4枚の葉が茎から落ちて分解し、消失することがあります。この場合は栄養成長ステージの特定に葉数以外の方法を用います。
生育ステージを求める方法の1つはトウモロコシを掘り出し、その茎を縦に割き開く方法です。栄養成長初期には節間伸長がほとんどないため、第1節から第4節までは強く押し縮められたような状態となり、節間が目で確認できません。節間が顕著に現れるのは通常第4節と第5節の間からで、この長さはおよそ0.6㎝くらいです。そこで第5節に着いた葉を確認し、それに続く上部の葉を数えることで生育ステージが判断できます(図21)。...