ごま葉枯病
ごま葉枯病 はトウモロコシ栽培で一般的な病害です。以前は熱帯や温暖な栽培地帯で特に問題となっていましたが、今日では東北や北海道でも問題となるケースが見られます。
九州などでは、生育後半に植物体全体が枯れあがり光合成が低下し、大きな減収を招く事例も見られます。このような場合には、抵抗性品種を選択することが重要です。一方で、軽度な発病は大きな減収要因とならないケース多くあります。
この病気も年次間変動や環境変動が非常に大きい特徴をもっています。
アメリカでは歴史的にみてごま葉枯病は大きな問題ではありませんでした。1970年代に特定の雄性不稔系統を使用してF1品種の生産が始まると、これから生産されたF1品種が病原菌レース T に激しく感染して広範な発生をみました。
今日では品種改良も進み、ごま葉枯れ病に対する抵抗性品種が流通しています。
ライフサイクル...
南方さび病
南方さび病
南方さび病は英語でSouthern rustとよばれ、 病原菌Puccinia polysoraにより発生し、高温・多湿な九州などで多く発生していいます。
この病気は高温(25℃以上)と高湿度の条件を好み、熱帯および亜熱帯地域に多く発生しているものの最近では九州だけではなく東北でも発生が認められています。おおむね7月―10月に大きな被害がみられることがあります。九州では大発生が数年に一度の割合で起こっています。
図1 典型的な南方さび病の病斑
南方さび病は菌に好適な条件下では生長が非常に早く、トウモロコシの開花期前後に発生すると数日で植物体全体に広がり、茎葉が急速に枯死してしまう場合があります。葉の表面に大量の鉄のさび状の胞子(図1)を形成するので明確に前述のさび病と区別がつきます。...
黒穂病
黒穂病
黒穂病(英名:Common smut)はほとんどのトウモロコシ栽培地で発生する病害です。黒穂病は Ustilago maydis という菌により発生しますが、この菌は土壌および作物残渣上で生存します。この菌は植物についた傷から侵入して、あらゆる組 織に感染することができ、特徴的な炭状の瘤を作ります(図1)。
この菌は絹糸からも侵入することができ、雌穂の先端に瘤を作ります。罹病により作物の機能が損なわれ、不稔も生じるため収量も影響を受けることもあります。
黒穂病菌はトウモロコシ圃場に広く存在しますが、生育中の作物に菌が侵入するための好適な条件の有無で感染度合いが異なります。生育初期に作物が受ける傷害は感染への感受性を高くし、また、干ばつによるストレス、密植、過度の窒素施用も病害発生の頻度を高めます。...
苗立枯病
苗立枯病
2-4葉期にトウモロコシの地上部が急にしおれて枯死する病気で、糸状菌が原因です。原因はピシウム、フザリウム等の土壌病原菌で低温・多湿条件で播種をすると発生します。
また播種深度が深すぎる場合や、除草剤によるストレスが強い条件では発生が助長されます。このため、土壌が湿っている条件下で無理やり播種し、鎮圧ローラーをかけることも避けなければなりません。
環境変動が大きく、同一品種を播種した隣接する圃場でも発病程度が異なることもしばしば観察されます。一方、南方サビ病やごま葉枯病のような明確なものではありませんが品種間に緩やかな遺伝的差異が認められています。パイオニアでは現在この選抜をおこなっており、まもなく抵抗性品種をお届けできると思います。
図1 激しい苗立枯病...
根腐病
根腐病
根腐病はピシウム菌により発生し、根の腐敗と茎内部の空洞化により黄熟期ころに急速に萎凋し、倒伏や収量・栄養価の激減、サイレージの品質低下を引き起こす重要病害です。1980年代に発生が確認されその病原はPythium graminicolaとされていたが、温暖化に伴い発生が増加し、P.arrhenomanesの関与も明らかになっています。2011年には北海道十勝地域を中心に大発生しサイレージ生産に深刻な打撃を与えています。九州でも時々観察されますが、このピシウム菌以外にフザリウム菌やジベレラ菌が関与している可能性があります。これまでに抵抗性に関する遺伝的変異が報告されていますが環境変動が非常に大きいため、自然環境下での選抜は困難が伴います。品種の選定には、公表されている根腐病の罹病程度を参考にすることが必要です。
図1 根腐病に罹病した株
発生の要因...
ワラビー萎縮症
ワラビー萎縮症
温暖な西日本ではサイレージ用トウモロコシを年に2回収穫する「二期作栽培」は一般的な作付け体系です。実はこの「二期作栽培」という作型は1988年にパイオニアがその専用品種の販売を開始したことが栽培の始まりです。これにより、年間の単位面積当たりの乾物収量が大きく伸びました。
ところが販売を開始するとほぼ同時に、熊本県菊池市のごく一部の地域で図1のように株全体が著しく萎縮し、葉の裏の葉脈がこぶ状に隆起する症状が観察されるようになりました。激しく萎縮した株の収量は激減します。
図1 ワラビー萎縮症の典型的症状
当初はその症状から種子伝染によるウイルス病が疑われました。しかしその後の調査でフタテンチビヨコバイCicadulina bipunctataの吸汁時に植物体内に注入される物質が植物体の生長に影響して、萎縮症状が発現することが判明しました。...