品種の選定
品種の選定
~品種の早晩性~
子実コーン栽培は未だ始まってから日が浅く、サイレージ用とうもろこし(以下サイレージコーン)との区別がされていないケースが殆どです。
品種の早晩性は子実コーンの場合、播種から子実が完熟するまでの期間で表される一方、サイレージコーンは総体(茎葉と雌穂を合わせた地表部の作物体全て)の水分がある一定レベルにまで低下する期間(多くは水分70%)で表されています。
よってある2種類のとうもろこし品種を比較した場合、サイレージおける相対熟期の日数表記の差が5日であっても、子実の場合は同じ熟期という事もあり、また反対のこともあります。
~子実コーンに適した特性~
子実コーンの品種選定で特に我々が重要と考えているのは①収量性(稔実性) ②子実の品質(カビの耐性等) ③耐倒伏性...
圃場づくり
圃場づくり
播種に入る前の準備として、サブソイラーやプラウで排水性を高めてください。排水先が思う様に確保できない場合は額縁明渠を掘るなどして下さい。
額縁明渠により排水をしやすくした例
子実コーンの種子は90%以上の発芽率を確保しており、他の作物に比べ種子自体の発芽の能力は高いと言えます。但し、極端な水分ストレス下では発芽トラブルが発生します。特に水田転作圃場において土壌水分のコントロールが難しい分、排水不良による滞水や砕土不良による乾燥には注意が必要です。
乾燥により圃場中央部に発芽不良が発生した例
とうもろこしは非常に深く根を張る性質があり、根量の多さが収量に直結します。土壌硬度がなるべく上がらない状態で深い作土層を確保するようにしてください。...
播種の要点
播種の要点
春播きにおけるとうもろこしの播種適期は概ね地温が10℃になる頃です(ソメイヨシノの開花時期)。早すぎる場合は低温による発芽、生育不良が起こる可能性があります。また晩霜の影響を受ける可能性もあります。
低温障害によって出芽に影響した個体の例
霜害を受けた幼苗の例
夏播きの場合は気温が高い状態からのスタートとなり、圃場が乾燥しすぎることにより発芽や生育不良が起こる、急激な徒長により軟弱となり倒伏に弱くなる、などの可能性がありますので播種深度確保などの要点を抑えることが重要です。
乾燥条件下で播種深度が生育に影響をした例左:深い 右:浅い...
栽植本数と株間
栽植本数と株間
栽植本数は圃場の立地や作型、品種の特性によって前後しますが、北海道においては9,000本/10a前後、府県においては7,000~7,500本/10aが現状では一般的です。
子実コーンは疎植になれば雌穂は大きくなり、密植になると雌穂は小さくなります。但し収量を構成する要因は(雌穂1本当たりの子実の数)×(栽植本数)です。つまりほどほどに大きい雌穂が均一に数多く揃っているケースが最も高収量となります。よって、株間を均一に確保し、一定の株立本数とすることが、収量の安定には欠かせません。
畝幅に特段の推奨はありません。追肥や防除作業を行いやすい(トラクターが入り易い)畝幅、もしくはコーンヘッダーの情感に近い畝幅に設定し、栽植本数は株間で調整してください。
畝間(縦)と株間(横)の10a当たりの栽植本数の目安...
追肥
追肥
施肥設計の項にもある通り6葉期以降に養分吸収が急激に増加します。逆に言うと、この段階で養分吸収が上手くいかない場合は、収量に大きな影響があり、後からの改善は難しくなります。
特に要求量が高いのは窒素であり、降雨や滞水で流亡の可能性も高くなることから、窒素を中心とした追肥がコストを抑えつつも、高収量確保をする上での近道です。
写真は追肥試験の結果です。追肥の効果は施用直後ではなく、特に絹糸抽出前後に以下の写真のような顕著な差が見られ、最終的には雌穂の先端の充実度合いに差が出ます。
左:子実への養分転流により下位葉に窒素欠乏の症状が出た例右:追肥により窒素欠乏が軽微で済んだ例、いずれも同一圃場で同一品種
上:健全個体下:養分が不足し、先端の肥大が阻害された例...
雑草防除
雑草防除
~農薬ラベルの見方~
子実コーン栽培における除草剤の適用範囲の理解は非常に複雑です。結論から言うと、出来上がった子実コーンの用途で考えると比較的理解がし易いです。
子実コーンには農薬ラベルで言う「乾燥子実」と「飼料用とうもろこし」のどちらかが該当します。つまり乾燥させた子実コーンであっても、用途が食用の場合は農薬のラベルに「乾燥子実」や「とうもろこし」の記載がある薬剤しか使用できません(「飼料用とうもろこし」の記載があっても使用不可)。一方、子実コーンの用途が飼料用の場合はサイレージコーン用途でなくとも「飼料用とうもろこし」の記載がある薬剤しか使用できません。
薬剤使用における分類例 「とうもろこし(未成熟とうもろこしを除く)」「とうもろこし(子実)」というラベル表記も見られますが、これらはいずれも食用の「乾燥子実」に該当...
収穫の要点
収穫の要点
~収穫のタイミング~
子実コーンは生物的には完熟期(ブラックレイヤー期:水分は30~35%)に養分充足が100%となりますが、機械収穫を行うことから、収穫時のロスや損傷などを軽減する必要があり、収穫は子実の水分が25%以下になってからが望ましいです。
ブラックレイヤーの発生を表しており、右に行くほど登熟が進んでいる。最も右の子実の下部にはハッキリと黒い層が出ているのがわかる
これは低水分の方が、子実がコブ(子実コーンの芯)から脱粒し易い為です。反対に水分が高いと未脱粒や子実の割れが増加します。また収穫時の水分が低い方が、乾燥時間が短くて済むため燃料費の削減にもなります。
左:未熟なまま収穫をし、子実がつぶれてしまった例 右:水分の高い状態で収穫し、脱粒不良となった例
~機械の選択と調整~...