トウモロコシの受粉と受精
種子(図3)となる胚珠を作ります。 図4に示すように、雌雄の花の間は垂直方向に約1m離れていて、これが受粉の成功を妨げる原因となりえます。 生産性に関して、雄花は100万以上の花粉粒、雌花は1000以上の絹糸を作ることが出来ます。この結果、絹糸の約1000から1500倍の数の花粉が生産されます。理論的には、20から30個体の花粉で1エーカー(0.4ヘクタール)の絹糸を受粉させることが出来ますが、全ての花粉が絹糸までたどり着くわけではありません。
花粉の放出は通常5日から8日の間で、温度と水分の条件が適した時だけ不連続的に起こり、そのピークは朝から午前中の半ば頃までです。また平均的な花粉粒の寿命は放出後約20分です。ほとんどの花粉はトウモロコシ個体から6ー10mの範囲に落下しますが、風によってより遠くまで飛散することもあります。およそ97%のトウモロコシ子実は他の個体からの花粉を受粉していると考えられています。
絹糸が出るのは雌穂の基部にあたる部分からで、続いて先端部に向かって進んでいきます。環境条件にもよりますが、個々の絹糸は約7日間、あるいは花粉粒を受粉するまで成長を続けます。(図6)
これまでの研究によれば、確実に受精が行われるには最低5個の花粉粒が各絹糸に到達して花粉管を伸長させ、そのうちの一つが受精に成功することが必要だとされています(図7)。受精後直ちに、胚珠は絹糸の基部に離層を形成し、他の花粉粒からの遺伝物質の侵入を妨げます。その後、絹糸は成長中の子実から切り離され、水分を失い褐色に変わっていきます。もし胚珠が上記の7日間で受精できなかった場合、絹糸は死に、受精できなかった胚珠はやがて消失します。これが穂軸に生じる不稔部分です。 カーネルセット(受粉後活発に成長している子実)は花粉の放出が終わった2ー3日後に確認することが出来ます。雌穂の苞葉を注意深く取り除き、雌穂を優しく振って絹糸が外れるかどうかを見ます。胚珠から外れた絹糸は受精が上手くいったものです。一方で絹糸がついたままの胚珠は受精が上手くいかず、それ以上成長しないものです(図8)。
受粉が成功するためには花粉の放出と絹糸の抽出が同時に起こることが重要で、これを「ニック」と呼びます。 ただ、現代の品種では雄穂が完全に抽出する1-2日前に苞葉から絹糸が現れることも珍しくはありません。 このことは、ここ20ー30年の間のハイブリッド品種の大きな変化の一つで、この結果、トウモロコシの受粉プロセスと収量が大きく改善しました。