ツマジロクサヨトウ
ツマジロクサヨトウは、古くからから南北アメリカに広く分布しトウモロコシを含めた約80種類の作物に被害を与える害虫であることは広く知られています。 アメリカ大陸以外では2016年に初めてアフリカで発生が確認されると一気にアジアに拡大しました。2018年にインド、2019年中国を含めアジアに拡大、同年7月には日本で初めて鹿児島で確認されています。 これ以降、1-2か月で日本のほぼ全域で発生が確認されましたが、2019年には実質的にトウモロコシが減収に至るという状況にはなりませんでした。 ところが、翌2020年には状況が一転しました。この年の8月は非常に温度が高く、干ばつ傾向にあり、岡山、愛媛、熊本の二期作トウモロコシに非常に大きな食害を受けた地域があり、特に岡山では二期作トウモロコシの発芽直後から激しい食害を受け80%以上の減収となった事例も発生しました。 熊本でも8月上旬に播種したものはそれほど大きな被害を受けなかったが、8月中旬に播種したトウモロコシに非常に大きな被害を受けた圃場がありました。 この年、岡山は積極にカルタップ剤を散布しましたが、残念ながらほとんど効果は見られませんでした。
食害を受ける部位
成長した幼虫は未展開の葉の中に潜むことが多く、葉に小穴を 点々と直線上に開け、葉縁から摂食して不規則 な食痕をつけ多量の糞を残します。 若い茎葉や子実を好み、特に生長点が食害されると生育を阻害され、被害が大きくなります(図1)。十分に成長した幼虫は、やがて地面に落ち地下2-8 cmの土壌中で楕円形の繭を作り、その中で蛹化します。
新たな知見
2022年の私たちのいくつかの調査は、非常に興味深いものがあります。ツマジロクサヨトウの研究では幼苗期の食害程度を表指標である「Davis Score」が使われます。評価は1-9までの数字で表され1が被害無で、9が被害甚です。 この年の調査で、ひどい食害を受けた7-9に分類された個体でもその後かなり回復するトウモロコシがあることが分かってきました。もしかするとワラビー萎縮症で経験したように品種間に緩やかな遺伝的差異があるかもしれません。 また、海外の研究ではツマジロクサヨトウの蛹化と降水量に負の相関があることが知られています。これは、「雨が多いと被害が少ない」という私たちの現場での経験則に良くマッチしています。 また、この害虫の被害が深刻な海外ではすでにいくつかの有望な殺虫剤の登録がなされています。日本でも近い将来登録される可能性があります。